情報の入手手段として、社会情報調査実習のアンケート集計結果などから、「テレビ」や「会社、学校、小規模作業所など」という結果が出、「福祉に関する情報」が不足していると感じているという人が多くいるということは第1章で述べました。では、現在Web上ではどのような情報を入手できるのでしょうか。
札幌については車イスガイドブックが札幌市保健福祉局から発行されており、HPでも公開されています。区ごとに金融機関や官公庁、飲食店、宿泊施設、ホテルなどに分類されており、容易に施設の設備状況を調べることができました。ところが、他の北海道の都市はここまで詳しい内容は載ってはおらず、Web上ではほとんど入手できませんでした。その他に「札幌車椅子遊ガイド わがままねっとほーむぺーじ」というHPがあり、掲示板なども設置してあり、常に新しい情報を掲載しているといった形態で、リンク集などのページもありました。その中には、個人が自分の住んでいる地域についての施設の設備状況を調べ、掲載しているものが多く、地元の人にしかわからない情報が手に入るという利点がありました。一方、ひとつの情報を得るには的を絞った検索が必要で、北海道の都市をあまり知らない方などはアクセス方法が複雑になってしまうのではないかという印象を受けました。
更に詳しく施設の設備内容について調べるため、いろいろ宿泊施設などのHPを開いては見ましたが、出入りのこと(スロープの有無)、車イス利用者用駐車場があるかなどは載っていないところがほとんどでした。
では、車イスの方にとってどのような設備が必要とされ、情報を提供することが重要となってくるのでしょうか。
1994年に「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)が公布されました。この法律は、本格的な高齢化社会の到来を間近に控え、高齢者や障害者の自立と積極的な社会参加が望まれることから、不特定多数のものが利用する公共的な性格を有する建築物を高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるよう措置していく必要がある。そのため、建築主への指導、誘導等の総合的措置を講じ、速やかに良質な建築ストックの形成を図る。
ことを主旨としています。<参考文献[4]「講座・高齢社会の技術7 まちづくり」>
その内容は、まず、不特定多数のものが利用する建築物を特定建築物と定め、その特定建築主は、出入口、階段、スロープ、昇降機、トイレなどを高齢者・身体障害者の方などが円滑に利用できるようにするための措置を講じるようつとめなければならないとしています。このことから、主な観光施設や宿泊施設などの一覧にこれらの情報を加えることが利用者にとって必要な情報だと思い、明記しました。
ハートビル法の基準に基づき以下のことが満たされていれば、車イスの方にとって有効な施設設備であるといえるようです。
接する道路(前面道路)から敷地内、そして建物のおもな入り口まで、連続した段差のない通路を少なくとも一つ設けること。その通路の最大傾斜は車イス使用者などでも楽に使用できるように配慮する。幅員は2m以上(道路構造令の基準。車イス使用者などがすれちがうことを考慮した寸法)が望ましい。
車イス利用者の中には自ら運転する者もいるし、障害のある者や高齢者の家族などの運転による自家用車利用は多い。乗降スペースの十分ある駐車場(駐車スペース)を建築物入り口に近いところに設置することが必要である。また、建築物への入り口まで、安全な通路を必ず確保しなければならない。
段差をなくし、十分な幅員をとる。可能であれば自動ドアが望ましく、回転式は避けるべきである。80cm以上開くものであるか。回転ドアの場合は別の入り口が併設する必要がある。
幅を130cm以上必要とする。幅員は車イス使用者を配慮し、段差を設けないようにする。レベル差がある場合はスロープを設ける。手すりを両側に設置する。手すりは子供や車イス使用者も考慮して、高低2段あるとよい。
レベル差がある場合は、可能な限りエレベーターの設置を検討する必要があるが、比較的小さな高低差などの場合はスロープを設ける。幅員はアプローチ通路を準じ、2m以上が望ましい。勾配は、車イスの動作寸法から、国際基準の1/12以下を目安とするが、1/5以下(できれば1/20以下)の勾配を検討する。
エレベーターとエスカレーターが代表的なものであるが、車イス対応エスカレーターの使い方は、「担当者が呼ばれ、動きを止め、車イス用にセッティングをし、付き添う」という流れが必要なので、必ずしも使いやすいものではない。可能な限りエレベーターを設置すべきである。
エレベーターを設置する場合は、入り口幅は80cm以上あるか。また、エレベーターのボタンは車イスの人も容易に届くところに設置されているものが望ましい。
車イスでも利用できるトイレを最低1ヵ所設けるようにする。介助者が異性であるときは,男女共用は便利である。外開きドアで、仕切り内部が広く、手すりがついているものが望ましい。また、広いスペースを利用して乳児用ベッドや荷物置き場などを設け、車イス使用者専用ではなく乳幼児連れなどの利用も含めたほうが、利用度を上げ、防犯上・管理上も良いことがある。
公衆電話は、車イスでも使用できるように、電話台の下部が開いたものを設ける必要がある。FAXや電子的通信の普及に対して,コインFAXや通信ターミナルの備わった電話を設置することも、聴覚に障害のあるものに対して検討していく必要がある。
都市における地下鉄の発達は著しいものがあり、地上の混雑を避ける都市の交通手段としてその役割が大きくなってきていますが、障害者の利用の面からみると、地下深くにホームがあって、その上り下りが階段中心の設備であるため非常に利用しにくいというのが現状です。しかし、近年に開通した路線では主要駅でエレベーター、エスカレーターなどの設備が最初から設置されている駅が増えてきているので、少しずつですが利用範囲が拡がってきてはいます。駅によってはエレベーターなどの設置状況が違い、必ずしも一人でホームまで行ける様にはなっていません。事前連絡が必要です。連絡を受けた駅で駅員がその時間に待機していて、乗車上の安全を考えて介助者をつける必要があるからです。
上記で述べた地下鉄の駅同様、JRの駅も改善された駅が次第に増えてきてはいます。エレベーターの設置されていない駅もあり、中には階段昇降機などの設備がある駅などもあります。やはり、利用する場合は事前連絡が必要です。
現在ではノンステップバス、ワンステップバスなどの運行は実現されてはいます。
| バス会社 | ノンステップバス | ワンステップバス | 低床式バス |
|---|---|---|---|
| 中央バス | 7台 | 6台 | 23台 |
| 市営バス | 5台 | なし | 183台 |
| JR北海道バス | なし | 10台 | 32台 |
| じょうてつ | 1台 | なし | なし |
図1は札幌市内の路線バス各社の設備状況です。<参考文献[7]「トム君のホームページ」>ノンステップバスは床面高さを通常のバスよりも低くし、地上から直接バスの床面に乗れるように階段をすべてなくしたものです。主に高齢者や子供の安全な乗車向けに開発されたもので、車イスを利用している方には乗車時の際にスロープの設備がないため、介助が必要です。
上記のワンステップバス(超低床式バス)は低床で取り出しの出来るスロープがついているバスのことをいいます(この内、中央バスは手動付きスロープです)。
低床式バスはノンステップバス以前に運行を開始されたもので、スロープは付いていません。
いずれにしても、バス停などの状況などを考慮すると、車イス利用者の方が一人で利用することは困難であり、車イス利用者の方が一人で利用できる、リフト付き(地上から80cm以上ある床面まで、車イスに使用者を乗せたまま油圧でリフト面になる)路線バスなどはほとんどなく、車イス利用者が一人でバスを利用することはまだ難しいようです。
障害者用設備のあるバスターミナルもまだ少なく、今後の設備の充実が望まれます。
公共機関がまだまだ整備不十分なわが国の現状では、身近に利用できる交通手段としてタクシーやハンディキャブ(福祉タクシー)といった車イス使用の障害者の方を車イスに乗ったまま移動できるように開発された車の利用価値が高いようです。しかし、ハンディキャブの台数が限られているため、早めの予約が必要になります。
これからは、福祉タクシーのように障害者・高齢者に特化したタクシーサービスではなく、一般のタクシーが高齢者・障害者が利用しやすいかたちに変化していく必要があると思います。
以上のことを考慮し、地域ごとの観光施設の設備状況、JR駅の車イス利用者用トイレの設置状況、公衆トイレの検索、宿泊施設の設備状況と検索の機能を付けました。