個人の目次へ - 全体の目次へ
論文へ

病院の色彩調節−カラーコーディネートと色彩療法の観点から−

松本 めぐみ

キーワード:病院の色彩、カラーコーディネート、色彩療法、看護婦、患者

普段、何気なく目にしている色彩は知らず知らずのうちに、私たちの感情という重要な精神作用に多大な影響を与えている。そして心理作用を応用し、ある時は安心感を、ある時は緊張感を与え意欲を高める空間、環境作りが今、関心を集めている。その一例として私たちが怪我をしたり、病気になった時、唯一の頼りとなる病院はやむをえず行くという側面があるのでそれだけ親しみにくいものである。それにも増して、病院のあの白くて、暗く、冷たい無味乾燥な雰囲気では、この先されるであろう病院での様々な検査や治療に気を回し想像をたくましくしてしまう。そのような所で患者が安心してくつろげ、回復への意欲を高めることができ、職員はやさしい気持ちを忘れずに働く事ができるであろうか。色の力で環境も気持ちも変わるし、人間関係にも影響を及ぼすのなら病院でもっと応用するべき知識だと思い、病院の色彩調節について調べた。

日本の病院は、壁やインテリアなどソフト面の充実より機材などの設備投資に重きをおいて心理ケアの面が遅れているのが現状である。現在、色彩心理学に基づいた病院作りが行われているが、患者が求めている物と一致しているのだろうか。また、最近ではナースウエアが色とりどりになり、病院内の内装も変えていこうとさまざまなことが行われている。ある公立病院では、オペ室までの長い廊下が患者に不安を与えるとして壁に直接、花などの絵を書いて暗い廊下のイメージを改善している。そのような試みがどれくらい広まっていて、どんな影響があるか実態を知るには看護婦、患者の生の声を知ることが必要であると考えた。そこで本論文では、患者、看護婦を対象に独自で作成した病院の色彩アンケート調査を基に病院の色彩調節の現状、意識度、改善点、色の効果と影響を確認し、色彩療法の文献と照らし合わせながら理想的な病院の色彩を明らかにすることにした。今回、4つの病院で看護婦を対象に、そのうち1つの病院で患者を対象に(看護婦対象と質問内容は異なる)30部程度づつ看護婦長さんに渡していろんな科の方に配っていただき、1週間後に回収するという方法でアンケート調査を行った。

分析の結果、4つの病院で看護婦の回答はどの質問もほぼ同じような内容、割合だった。また、病院の色彩に気を遣っている看護婦は全体で約2割しかいなかったが、病院の色彩に対する改善点を記入した人は全体で約9割いたので、潜在的な意識、考えを持っている人は多いとして今後期待できる結果となった。患者の色彩に対する関心も高かったことから、改めて色の必要性を感じた。病院の色彩についての改善点は患者も看護婦もほぼ一致していた。「オールロビー・外来待合」では基本的にくつろぎを重視していて、柔らかく温かみのある色を増やす(特にモスグリーン)、自然木材などを使ってアットホームな感じを出す、科の特色で色分けする(特に小児科、産婦人科)という回答率が高かった。「病棟系」では、カーテンやクロスの色は淡く明るい色を使う(特にクリーム色、ピンク、水色)、太陽光が入るように窓を大きくする、白が与えるマイナス的影響を考慮する、という意見が多かった。白衣高血圧の人や、白い部屋では痛みに集中してしまうという患者もいるようで、病院色というべき白にこだわる必要はうすれてきているようだ。また、手術室の色彩は血の赤の補色なので壁にうつる補色残像が見えなくなるとして青緑が医師、看護婦側から望ましいとされている。しかし、「手術室の壁の色が不安の頂点にいる患者にとって本当に青緑が良いといえるか」という回答があり、少数意見ながらも無視できない内容だと思うので、これをどう受け止めていくべきか検討を要するであろう。

また、今回患者にアンケートを取れた病院は1つだけだったので、病院ごとの比較を十分にすることができなかった。これらの点を踏まえて今後さらに調査を進めていくことで、人々の求める理想的な病院の色彩が見えてくるであろう。

指導教員:森田 彦