本プログラムは、『メモをとる』という能力を可能な限り特化したソフトである。
パソコンを使用している最中に大急ぎでメモを取らなければならない場面があるとしよう。私も何度かそのような経験があるのだが、そのような時に限って手元には紙もペンもないケースが多い。そういった場合は大抵windowsのメモ帳を開いて対応し、図が必要になった時には更にペイントも開くようにしている。だが、『1:メモを大量にとらなければならない』『2:とにかく急いでメモをとる必要がある』『3:後日、メモをとった時間の取得が必要である』といった条件が重なった場合はどうだろうか? メモ帳やペイントでは保存時のファイル名を設定するだけでもタイムロスになり、10枚や20枚、場合によってはそれ以上の大量のメモが必要になるケースでは対応が追いつかなくなってしまうのではないだろうか?
私の知る限りにおいて『簡易性』『汎用性』といった機能を同時に保持し、且最も優れているプログラムはWindowsのメモ帳とペイントなのだが、上記の説明通り両方を同時に開いた場合は大幅に時間のロスとなってしまう。後々のファイル整理にはWordやペイント関連のソフトウェアを使用するにしても、一時的な大量のメモをとる手段としてはどうにも使い勝手が悪い。
そのような状況の例として、ゼミの取材や複数人に行なうアンケート調査が挙げられる。どちらもメモを書き留める時のスピードが重要になるが、集計時にかかる手間のことを考えるとなおざりにも出来ないのがファイル名であろう。手書きの場合であればルーズリーフやノートの隅に日付や時刻等を書き留めることが想定され、そのメモを取った時の状況等がかなり細かく記入できる。しかし、ルーズリーフやノートといった媒体では、どうしても紙やペン、修正液もしくは消しゴムといった道具がかさばってしまうという欠点が生じてくる。これはメモを取る量が多くなれば多くなるほど深刻となる問題であり、後々にデータを集計し、統計をとった上で整理をしたいといった場合には特に時間を浪費してしまう。私も何度か経験のあることなのだが、いざアンケートをとるといった状況になると思わず慌ててしまい、後々になって数字の『1』と『7』の違いに戸惑ったり、急いで書いた為に漢字の略字が分からなくなってしまうといった小さなミスがいつくも生じるはずなのだ。
現在、そのような問題を解消するソフトはVector(http://www.vector.co.jp)等で配布されるているフリーソフトの類に多く見られる。任意のフォルダ内にある全てのファイル名を一括して変換するものや、フォルダ内のファイル形式を同一形式にするといったソフトウエアである。グラフィックスファイルを例にとると、.bmpや.jpg、.gif形式等の画像エフェクト、また、それらの閲覧を核として行なうものが主流なようで、特定の状況においてのみ効力を発揮するものが多い。全ての状況に対応するソフトウエアはシェアウエアであり、そうなると逆にソフトウエアとしての面白みが欠けてくるのも事実である。フリーソフトの面白みとは、“限られた場面でシェアウエア以上の力を発揮する”点であり、そのソフトウエアを活用する個人の状況に最も合った物を使用することこそがパソコンを効率よく使うということであろう。
以前私は手書き入力でビットマップを描画するソフトウエアを使用したことがあったのだが、これがが本当に使い難かった。専用パッド内にソフトウエアに同梱されてあったプラスチック製のペンでラインを書き出すと、それをプログラムが感知し、キャンバス内に描画されるという仕組みだ。ノートパソコンに使用されている静電気を読み取る処理に近いと思われる。こうした説明だけを聞くと大変使い易そうな印象を受けるのだが、私が普段マウスによる描画に慣れていた為か、ポインタが初期の描画ポイントからずれてしまったり、誤ってパッドに軽く触れてしまっただけでも描画処理が行なわれ、大変使いづらかった記憶がある。今のところ、人間のフリーハンドに勝る描画方法は存在しないと断言しても過言ではなく、パソコンを使用し、かなり細かい所まで作業を施す人間のフリーハンドに近い描画方法は、マウスによる描画方である。
それは鉛筆の代わりにキーボードを使用するテキストエディタも同様であり、Microsoft社のwordやJUSTSYSTEM社の一太郎といった有名なシェアウエアが流通しているせいか、多くのフリーソフトでは簡易性や使用状況を特定した“〜専用テキストエディタ”という形でそのソフトをアピールしているものが非常に多い。一時的なメモや走り書きに使用する場合にはフリーソフトの方にやや分があるのではないだろうか。パソコンの中級者以上の何人かに同様の質問をしたところ、ほぼ全員がフリーソフトにシェアウエア以上の価値を見出していた。
だが、豊富な種類を見せるフリーソフト群においても、片やスピードに重点をおいているものは意外と数が少ない。グラフィックの閲覧やテキストの表示にスピードを重視するケースは多いが、保存時にさえスピードを求めているエディタは本当に数が少なかった。
少なくとも私が調べた限りにおいてはその存在が確認出来なかった為、まだ私が知り得ないフリーソフトの数を確率的に考えたとしても、全体におけるスピード重視型のテキストエディタは圧倒的に少数派であることが証明された。
さて、ここでいよいよ私の研究テーマへと論点を移してゆく。
だがまずその前に本論文内では作成したプログラム、『スピードを重視したペイント付きテキストエディタ』を、『落書き帳』と統一して呼称することにする。開発段階以前のコンセプトのひとつに、フリーハンドで紙のメモ帳のように気軽に書きこめる“落書き帳”のようなものを作ってみたいという考えがあり、本プログラムはそういった“気軽さ”をアピールしたかった。落書き帳という名前であれば普段の生活にある程度の馴染みがあるが故に、パソコンを扱い慣れていない人間にも受け入れてもらえるだろうという配慮からである。
落書き帳は当初、サウンドノベルや絵日記といったテキストとグラフィックを同時に扱うソフトウエアを作成したいという漠然とした考えから生まれたプログラムであった。上に記したように、パソコン初心者でも受け入れやすい、“とっつき安さ”といったものをプログラムに見出したかったのだ。
開発コンセプトがサウンドノベルから絵日記へと移行した頃、ソフトウエアの機能を考える上で、ある大きな考えが浮上した。
『スピード』である。
先生は常日頃、「プログラムには他にはないオリジナリティーを出さなくてはならない」と何度も仰っていた。急いで大量のメモを取らなければならないという限定した場面において最もその力を発揮するソフトウエアであり、『二度手間を省き』、『デスクトップに常駐し』、『各種設定が容易に行なえる』といった利便性、汎用性にも富んだプログラムこそが落書き帳である。オリジナリティーは随所に施したと自負している。
メインとなるフォームであるが、画面の左にペイントを、画面の右側にメモを配置した。本プログラムを最も簡単に説明すればそのようになる。だが、落書き帳はあくまで『スピード』と『利便性』、それに『汎用性』が最大の特化点であり、スピードを追求するために各種ツールボタンを適用し、ソフトウエアとして少しでも扱い易いようにヘルプやポップアップメニュー、ステータスバーへの情報追加もこだわって設計した。もちろんキーボードから全ての操作を行なえるようにショートカットキーも割り当ててある。
中でも『スピード保存ボタン』、『システムファイルからのオートロード』、『ファイル検索』の三機能は本プログラムの最も注目すべき点のひとつである。
それではこれより本プログラムの機能を記してゆくが、ソース等の細かい情報はプログラムの内部を参照して欲しい。これより記述する落書き帳の機能には必要最低限の説明を記述してゆくことにする。プログラムはフロッピーディスクの二枚目に『SpecializedSeminar』のファイル名でLZH形式に圧縮して封入してあるので必要とあればそちらを参考にすると良いだろう。
尚、落書き帳のプログラムの各所にはボーランドのフォルダ内にある参考プログラム(Demo)が使用されてある。今後、中でもリッチエディットをメインに使用したプログラムを作成する場合はC:\Program Files\Borland\Delphi5\Demos\Richeditにあるプログラムを、ペイントをメインにする場合にはC:\Program Files\Borland\Delphi5\Help\Examples\Jpegのプログラム等を参考にすると良いだろう。